ヌードモデルなんてしているから、サチエちゃんはてっきり子持ちのシングルマザーかと思っていた。

すると驚くことに旦那がいるというのである。

しかも再婚で、旦那はモデルの仕事を許してくれているのだそうだ。

「文句なんか言わせないわよ。あたしがやりたいことやるわ。

怒ったらあたしの方が怖いってことダンナも分かってるから何も文句言ってこないわねぇ。

しょせんあたしなんか、不良だ・か・ら・サ」

とタバコをふかしながら言う。

彼女は過去に水商売で経営をしていたことがあったらしい。

１週間で一千万くらいあっという間に儲かると言う。

「びっくりするくらいボコボコ儲かるのよ！ボンボン札束が飛び込んでくるのね」

そんな風に、いろいろと強烈なサチエちゃんだが、意外と勉強熱心なところがあり、職業訓練所で行政書士の資格を取ったと言う。

割と誰でも取れる資格らしいが、意外であった。

経営をしていたから、法律的な事柄に興味があったのだろう。

そんな折、私が結婚をすることになり、主人の転勤の関係で札幌に行くため、最後に2人で、大分駅前のカフェで会おうということになった。

その時の彼女は少し変だった。

彼女は相変わらずとても美しく、タバコをスパスパふかす姿はかっこよかったが、いつもと違い、目がとろんとしている。
しきりに妙に恥ずかしそうに目をそらす感じがあったので私も妙に気恥ずかしくて、一体何なのだろうと思っていたが、

「今ね、彼氏がいるの」とのこと。なるほどね。

「信じられないくらい素敵な男性と恋に落ちてね。毎晩毎晩それは素敵な時間を過ごしているの。ロマンチックな世界の女王になった気分よ…」

サチエちゃんはご本人の言うところでは「不良」だが、意外と言葉遣いは非常に美しいのだ。やばい、とかうざいなどの汚らしいギャル言葉など一切出てこない。

セックスした、などと言わず、「肌を重ねたわ」などと言う。

どうやら随分なお金持ちでハンサムでスマートな男と恋に落ちているらしい。
大分にそんな男がいるのも驚きである。

そして「毎晩すーっごくいいのよぅ」とうっとりして言う。

濃密な夜を思わず想像してしまい、私も何だか恥ずかしくてしょうがなくなってきたので他の話題に移った。

まあそんなことがあったが。

その彼氏とはどうなったのだろうか。短いアヴァンチュールで終わったのだろうか。

お互い遠方になり、何年も経てばだんだん疎遠になっていくのは致し方ない。それでも年賀状で細々と交流し、時折SNSの投稿を見たりしていた。

そんな折、１年前くらいだろうか、サチエちゃんのラインの投稿を見て腰が抜けるほどびっくりした。

彼女は行政書士の資格を取った後、猛勉強の末、何と司法試験に合格したらしい。

私はあまりに驚いて、早速メッセージで「すごいね！！びっくりした！！！おめでとう！！！」と送った。すると彼女はすごく喜んでくれて、メッセージを送ってくれた。

勉強の最中も息子さんが交通事故にあって骨折したとか、いろいろあったらしい。

そんな中なんどもくじけそうになり、心が折れそうになったが、必死に頑張ったと言う。

やはり只者ではない。 

すごいなあ。本当にかっこいい！サチエちゃんはエリン・ブロコビッチを地で行っている。

私はサチエちゃんの大ファンです。

続く

※登場人物は実在の存在ですが、プライバシー保護のため仮名にしてあります。

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