絵画モデルはやめられない

20年間、絵画モデルをしていました。謎に満ちた世界の体験を余すことなく綴っています。

2019年02月

そういうわけで、しのぶには何となく振り回されて終わった。


しかし、彼女からは「新しい仕事」という嬉しい置き土産をいただいた。


大分大学での彫刻の授業の時、私のヌードを見たしのぶが、社長のたまさんに、私の体が綺麗だから写真の仕事もすべきだと大絶賛してくれていたみたいなのだ。(まあもちろん百倍誇張して言ってくれている)


ほどなくしてたまさんから「しのぶちゃんが褒めていましたよ!写真の仕事をしてみませんか?」との連絡が入った。


給料は、絵画モデルの10倍だった。


ただでさえ絵画モデルのバイト代は割高で、しかもヌードモデルとなるとかなりもらえる。


その10倍だ。


うまい話だと思ったが、顔がそのまま写る、という事や、少なからずエロ目的のみのカメラマンがどの撮影会にも1人はいるという話を聞いた時に少し迷いはあったが、これもまた随分軽く開いた扉だったので、軽い気持ちでやってみることにした。



早速初めての撮影会が宮崎の延岡で行われた。

絵画教室と違い、写真の仕事には「マネージャー」も同行する。今回はたまさんが同行してくれた。
マネージャーは移動する時にガウンを羽織ってくれたり、日傘をさしてくれたり、お昼ご飯を用意してくれたり、おかしな人がいたら「コラッ」と注意してくれたりする。 


撮影会に参加するカメラマンさんは、アマチュアではあるが本格的な方達ばかりで、ほとんどが60代くらいの男性だった。


県美展とか日展などといった、美術の展覧会で写真の部門があるが、それに出品されるような文化レベルの高い撮影会であり、エロ目的では断じてない事を言っておく。


美術館にも行った事がなくてどんな感じかわからない人は本屋に行って「アサヒカメラ」という雑誌があるのでみてもらいたい。

それに出ているような女性のヌード写真といえば全くエロ目的でない事がわかる。


ここへきてそれさえも下卑た目で見るような、美術とエロの境目もわからない人間はここから出て行ってもらいたい。



撮影会の話に戻る。


こういう撮影会では、何となく主導権を握る男性が必ずいて、そういう人はモデルをのせるのがうまい。

時にはユーモアを交え、うまくのせながら際どいポーズをさせていく。


「四つん這いになって、腰を頭より上に持ってけ。目は女豹みたいにこっちを睨みつけろ。もっともっと上目遣い。もっと!下半分白目になるくらいまで!」と。かなり無茶なことを言うが、それぐらいしないといい写真が撮れないので頑張るしかない。

女性らしい、ということは大変に苦労の多いものだなあと感じた。


ハイヒールにしろ、纏足にしろ、女性らしくあることはまるで拷問のようだ。

バレエや日本舞踊などは、女性らしい所作を身につけるためのものだという。


人は放っておいたらどんどんおっさんか猿みたいになってしまうのだ。 


何ということのないポーズでも、実は随分アクロバティックで、大変だった。

そして、絵画モデルと違い、写真の仕事は朝10:00頃から夕方16:00頃までかかり、移動も入れるとほぼ丸一日取られた。その間かなりきついポーズをとらされ続けるので、しばらく筋肉痛になったりした。




続く


登場人物は実在の存在ですが、プライバシー保護のため仮名にしてあります。




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彼女は、相手の両親や親戚からも随分ひどい対応をされ、我慢の果てにとうとう離婚をしたという。


蛇がとぐろを巻くように怨念凄まじく延々と語られる愚痴を、私はあっけにとられて聞いているしかなかった。


しかしこれは女性の癖なのだろうか。

しのぶちゃんの会話の端々には、自慢が見え隠れする。


マンションを2つ持っていること、旦那の姉が医者であることなど、言わなければわからない自慢をするりと潜り込ませてくる。


私をやたら褒めるのも、自慢話をするための布石のように思えてしまう。


彼女の家に遊びに行く度に、別れた旦那やその親戚達への愚痴や怨念を何時間も聞かせられるのも、訳が分からなくなってきた。


延々話を聞いてあげた挙句、合コンの話になった時に「ミヤコちゃんは合コンで自分を出せずに終わりそう!」などと突然言われ、ムッとした。


メールもやたら頻繁に来た。


それも相変わらずの元旦那の悪口メールだった。

トイレットペーパー1巻分、といってもいいくらいの凄まじく長い長いメールなので、気味が悪くなってきた。


大分大学での長丁場の仕事が終わった後も彼女との交流は続いた。



1ヶ月ほど経ったある日、買い物で博多の街を歩いていると、しのぶからメールが突然入った。


「元の旦那とよりが戻りました。実は妊娠しています」


とのことだった。

原稿用紙3枚分はありそうな長い長いメッセージは一切読まず、スクロールだけしてたった一言、

 

「よかったね」


とだけ返信した。

「ふざけるなくそ女」と言う一文をしっかり行間に潜り込ませて。


案の定、彼女からの連絡はそれ以来一切来なくなった。



それからさらに3ヶ月ほど経ったある日、夢を見た。


しのぶに電話をしているが、ザーザーいってなかなか繋がらない。そして、プツッと何かが切れた音がした後、シーンと静かになり、そこで目が覚めた。


彼女との縁は、この時本当に切れたような気がした。



※登場人物は実在していますが全て仮名です。



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