そういうわけで、しのぶには何となく振り回されて終わった。
しかし、彼女からは「新しい仕事」という嬉しい置き土産をいただいた。
大分大学での彫刻の授業の時、私のヌードを見たしのぶが、社長のたまさんに、私の体が綺麗だから写真の仕事もすべきだと大絶賛してくれていたみたいなのだ。(まあもちろん百倍誇張して言ってくれている)
ほどなくしてたまさんから「しのぶちゃんが褒めていましたよ!写真の仕事をしてみませんか?」との連絡が入った。
給料は、絵画モデルの10倍だった。
ただでさえ絵画モデルのバイト代は割高で、しかもヌードモデルとなるとかなりもらえる。
その10倍だ。
うまい話だと思ったが、顔がそのまま写る、という事や、少なからずエロ目的のみのカメラマンがどの撮影会にも1人はいるという話を聞いた時に少し迷いはあったが、これもまた随分軽く開いた扉だったので、軽い気持ちでやってみることにした。
早速初めての撮影会が宮崎の延岡で行われた。
絵画教室と違い、写真の仕事には「マネージャー」も同行する。今回はたまさんが同行してくれた。
マネージャーは移動する時にガウンを羽織ってくれたり、日傘をさしてくれたり、お昼ご飯を用意してくれたり、おかしな人がいたら「コラッ」と注意してくれたりする。
撮影会に参加するカメラマンさんは、アマチュアではあるが本格的な方達ばかりで、ほとんどが60代くらいの男性だった。
県美展とか日展などといった、美術の展覧会で写真の部門があるが、それに出品されるような文化レベルの高い撮影会であり、エロ目的では断じてない事を言っておく。
美術館にも行った事がなくてどんな感じかわからない人は本屋に行って「アサヒカメラ」という雑誌があるのでみてもらいたい。
それに出ているような女性のヌード写真といえば全くエロ目的でない事がわかる。
ここへきてそれさえも下卑た目で見るような、美術とエロの境目もわからない人間はここから出て行ってもらいたい。
撮影会の話に戻る。
こういう撮影会では、何となく主導権を握る男性が必ずいて、そういう人はモデルをのせるのがうまい。
時にはユーモアを交え、うまくのせながら際どいポーズをさせていく。
「四つん這いになって、腰を頭より上に持ってけ。目は女豹みたいにこっちを睨みつけろ。もっともっと上目遣い。もっと!下半分白目になるくらいまで!」と。かなり無茶なことを言うが、それぐらいしないといい写真が撮れないので頑張るしかない。
女性らしい、ということは大変に苦労の多いものだなあと感じた。
ハイヒールにしろ、纏足にしろ、女性らしくあることはまるで拷問のようだ。
バレエや日本舞踊などは、女性らしい所作を身につけるためのものだという。
人は放っておいたらどんどんおっさんか猿みたいになってしまうのだ。
何ということのないポーズでも、実は随分アクロバティックで、大変だった。
そして、絵画モデルと違い、写真の仕事は朝10:00頃から夕方16:00頃までかかり、移動も入れるとほぼ丸一日取られた。その間かなりきついポーズをとらされ続けるので、しばらく筋肉痛になったりした。
続く
※登場人物は実在の存在ですが、プライバシー保護のため仮名にしてあります。
私の普段のブログはこちら↓遊びに来てね
日々、花咲くパレット
ポチッと押してください↓
生活・文化ランキング