絵画モデルはやめられない

20年間、絵画モデルをしていました。謎に満ちた世界の体験を余すことなく綴っています。

2022年06月

とある12月、母校の芸短(大分県立芸術文化短期大学)でヌードモデルの仕事が入った。一回の授業が3時間、というのが一週間つづく、美味しい仕事だった。ようするにまとまったバイト代が入るのだ。


初日。

朝御飯はコーヒー一杯だった。しかもその日は生理2日目だった。

肉体的にはかなりゆとりのない状態であったが、当時は若かったのであまり気にしなかった。


その日の授業は、クロッキーのみだった。つまり、3分程の短時間の様々なポーズを沢山ラフに描いていくのだ。


1時間、2時間は順調に過ぎた。


今思えば、休み時間に、副手さんが用意してくださったコーヒーを飲んだのが悪かった。


生理2日目でただでさえ貧血気味の状態で、朝御飯を摂らず、おまけに貧血を増幅させるコーヒーを2杯も飲んでいる。


異常は授業開始後2時間半後に起きた。


立ちポーズをとっていると、急に、血が巡る感覚がなくなってきた。
身体中の血がサアーッと足元へとひいていく嫌ぁ〜な感覚があった。


一気に顔が真っ青になり、あっと思った時には、自分の体が崩れ落ち、地面へ倒れてしまっていた。

あまりに信じられない状況に、自分の事ではないようだった。


生徒さんがびっくりして一斉に中腰気味にふわっと立ち上がり、気の利くリーダーっぽい女の子が大丈夫ですか、と来てくれた。


ポーズはあと1つ残っている。ここで早退して30分のバイト代を削られるのは絶対に嫌だった。たったあと1ポーズ頑張ればいいのだ。最後の最後で負けてたまるか。


「大丈夫ですよ、心配ありません、再開しましょう」


「いえ、あの、顔色が真っ青です。どうか副手室で休んで下さい」


いや、だいじょうぶだから、とふらふらと立ちあがろうとしたがその子は強い意志を込めた眼差しでしっかり私を見つめ、有無を言わさない感じで

「いえ、モデルさん、休んで下さい!」と言った。

本気で心配して言ってくれたその力強い言葉がとても嬉しかった。


結局副手室で終わりまで横になった。

その後、特にバイト代が削られることはなかった。


モデル中に倒れたのはさすがにこの時だけである。


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※登場人物は全て実在しますが、プライバシーを考えて仮名にしてあります。



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元来えぐいブログだが、今回もかなり生々しいエピソードだ。食事中の方は、時間を置いた方がいいかもしれない。



ヌードモデルをしていて一番気がかりなのはやはり生理だ。
サチエちゃんに相談したところ、タンポンを勧められた。

しかし、私はあれが苦手だ。毛羽だった塊がどうしたって中に入っていかない。
入れたところでどこまで突っ込んでいいかわからないし、あの紐がとれてしまったらどうするんだろうという恐怖感もあった。

タンポンをしても血が溢れてしまって足に真っ赤な血の筋が「つー」とできたままポーズをとっていたモデルさんもいた。

そういうわけで、私は授業の日に生理になってしまったら、ただひたすらぐっと我慢する、という原始的な努力をしていた。


いったいどのような努力だったか。

授業が始まる前のモデル控え室で、

「子宮よ止まれー 子宮よとーまーれー いーまー 出ーるー 時ーじゃなーいーぞー♪」

という歌を歌う。もちろん私が作った歌だ。

そして、「ぐっ!!!」と子宮に力を込める。その時子宮に「今から2時間は血を出すんじゃないよ!」としっかり言い聞かせることを忘れない。そうすれば、授業の間は、本当に血がでないのだ。

しかし、ある日の授業で、「なんか生魚のにおいがするねぇ!なんだろう」と生徒さんが言っていた。

微妙に残っていた血が匂ったのだろう。


某大学で授業に入った時のこと。生理だったがたいして量は多くなくしっかりと我慢できていた。休憩を示すタイマーが鳴り、モデル台の白いシーツの上に座ってゆっくりしていた。
タイマーが鳴ったので、ポーズに入ろうと立ち上がった時だ。
ごくかすかに、シーツにうっすらと血がついてしまっていた。目を凝らすとほんのり赤いというレベルだ。しかも面積とて直径1センチくらいのもの。これをいちいち「汚しちゃったんですよぉ〜すみませぇ〜ん!」と謝るレベルではない。謝れば気がつくし謝らなければ気がつかないくらいの本当に微妙なものだった。

ここは図々しく無視した。
ヌードモデル自体が図々しい仕事だからいいのだと自分に言い訳をした。

その日の授業は終わり、翌日。
私しかわからないであろうあの汚れているはずのシーツの部分をちらと見た。
すると、血の汚れがしっかりと取れているではないか。どこをどう探しても汚れていない。別にシーツを丸ごと敷き変えた様子もない。昨日と今日である。シミ物件以外の場所は昨日と寸分変わらない。
副手さんがふき取ってくれたのだ。
あんな微妙な汚れがバレていたのだな、と少し恥ずかしかった。



血にまつわる話 その2 に続く


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※登場人物は全て実在しますが、プライバシーを考えて仮名にしてあります。



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