とある12月、母校の芸短(大分県立芸術文化短期大学)でヌードモデルの仕事が入った。一回の授業が3時間、というのが一週間つづく、美味しい仕事だった。ようするにまとまったバイト代が入るのだ。
初日。
朝御飯はコーヒー一杯だった。しかもその日は生理2日目だった。
肉体的にはかなりゆとりのない状態であったが、当時は若かったのであまり気にしなかった。
その日の授業は、クロッキーのみだった。つまり、3分程の短時間の様々なポーズを沢山ラフに描いていくのだ。
1時間、2時間は順調に過ぎた。
今思えば、休み時間に、副手さんが用意してくださったコーヒーを飲んだのが悪かった。
生理2日目でただでさえ貧血気味の状態で、朝御飯を摂らず、おまけに貧血を増幅させるコーヒーを2杯も飲んでいる。
異常は授業開始後2時間半後に起きた。
立ちポーズをとっていると、急に、血が巡る感覚がなくなってきた。
身体中の血がサアーッと足元へとひいていく嫌ぁ〜な感覚があった。
一気に顔が真っ青になり、あっと思った時には、自分の体が崩れ落ち、地面へ倒れてしまっていた。
あまりに信じられない状況に、自分の事ではないようだった。
生徒さんがびっくりして一斉に中腰気味にふわっと立ち上がり、気の利くリーダーっぽい女の子が大丈夫ですか、と来てくれた。
ポーズはあと1つ残っている。ここで早退して30分のバイト代を削られるのは絶対に嫌だった。たったあと1ポーズ頑張ればいいのだ。最後の最後で負けてたまるか。
「大丈夫ですよ、心配ありません、再開しましょう」
「いえ、あの、顔色が真っ青です。どうか副手室で休んで下さい」
いや、だいじょうぶだから、とふらふらと立ちあがろうとしたがその子は強い意志を込めた眼差しでしっかり私を見つめ、有無を言わさない感じで
「いえ、モデルさん、休んで下さい!」と言った。
本気で心配して言ってくれたその力強い言葉がとても嬉しかった。
結局副手室で終わりまで横になった。
その後、特にバイト代が削られることはなかった。
モデル中に倒れたのはさすがにこの時だけである。
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※登場人物は全て実在しますが、プライバシーを考えて仮名にしてあります。
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