ついでに、もう一件犯罪物件を報告させていただきたい。

これはかなり特殊な例だった。


何がって、犯人の見事な勘違いぶりが。


近所の公民館で、ヌードモデルの仕事が入った。生徒さんは1人だという。


新規の生徒さんで、ヌードモデルの場合、公民館で仕事をするのが事務所の決まりになっている。

いきなり自宅に行くと、何があるかわからないからだ。


タマさんからのメールに、「中金さんという方です。初めてのお客様です。初心者なので親切にしてあげてくださいね。」とあった。

この時点では、男性なのか女性なのかもわからなかった。


しかし、大分では見たことがない随分珍しい苗字だった。


夜19時、約束の時間に公民館へ行った。

入り口で待っていると、目鼻立ちのはっきりした、大柄な、30代くらいの男性が現れた。

60代くらいの女性を想像していたので、かなり意外だった。


挨拶をすませ、教室に入った途端、不思議なことにそいつはドアというドアに椅子やテーブルを積み重ねだし、バリケードのようにした。

これがこの人のやり方なのだろうか。

あまり気にもとめず、ポーズに入ってクロッキーを始めた。


彼は初心者ということで、あまり描き方などがまだよくわからないなどと私に色々と質問してきた。

割と真面目そうな従順な雰囲気の青年だったので、私はタマさんに言われた通り、親切に気さくに答えてあげていた。


しかし、どうも質問の内容が変である。



初心者も初心者、デッサン用の鉛筆を握ったのも今この時が初めてじゃないのか?絵なんか描いたことないでしょ?という感じなのだ。


え、この人、何しに来てんだろ


という素朴な疑問が心に湧き上がる。


四つん這いのポーズをとれますか?と言う。しかもかなりおどおどして。

ごめんなさい、そういうのはできないんですよーと言う。


じゃあこんなポーズは?

と次々と提案してくるポーズが、どうも完全に勘違いのポーズだ。

絵を描くためのポーズではない。


あれえー??


この人、絵を描こうとしてないぞ。なんかおかしいな。


一体どんな絵を描いているのか、スケッチブックを覗いてみた。



品のないヤンキーが公衆便所のトイレに、低知能丸出しの「おっぱい」の落書きをしたりしているが、あんな絵を描いていた。



目玉が飛び出るほどびっくりしてその絵をまじまじと見つめていると、そいつは、不思議なことを言い出した。


「僕を描いてもらえませんか?」


「は?」


モデルさんの気持ちがわかると描けると思うんで、と言う。意味がわからない。


そして、いきなり服を脱ぎ出し、全裸になり、ポーズをとり出した。


呆気にとられた。


一応クロッキーしてやった。


人間には恒常性の心理というものがあるらしい。

はじめに親切に接してあげた人間には、ずっと親切でいてあげようとする。

逆も然り。

統一された自己イメージというものを保とうとする心理機能があるらしい。


それが働いたのだろう、心の中ではドン引きしていたものの、私はそいつには最後まで割と親切に接してやっていた。



変な生徒だったなぁ、なんだ、あれ。あんなのもいるんだなあなどと思いながらも、1週間ほどが過ぎたある日、タマさんから電話がかかってきた。


中金のことを聞いてくる。

「ねえ、何か変なことなかった?」


「あ、はあ。かなり変なやつでしたねー、あれは。」とあった出来事をつらつら語っているとタマさんは電話の向こうで怒りでワナワナと震え出した。

「あのね!そういうことは、これからちゃんと言ってちょうだい!何かあったら大変なことなの」と言うので、一体何があったんですか?と聞いた。



先日、モデルのリサさんが公民館で中金の相手をしたらしいのだ。


そして、M字開脚などといった卑猥なポーズを要求してきたので、大喧嘩になってリサさんは途中で帰ってきたらしい。


「あいつは絶対出入り禁止!!ミャー子、これからはちゃんと変な奴がいたら報告して」


何か変だ、と感じたら実際何かおかしいのだ。


違和感に敏感にならなければいけない。本当の犯罪に巻き込まれる恐れがある。


続く


登場人物は実在の存在ですが、プライバシー保護のため仮名にしてあります。



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