失業保険をもらいながら自宅で作品制作を続け、作家として食べていきたいと頑張ったがそんなに簡単にはいかない。
6か月経ち失業保険も切れたので、大分市内の明野にある「マットコート社」という小さな印刷会社に就職した。
大きな会社では人間関係の鬱陶しさから逃れられないという前回の教訓もあり、社員4人の小さな会社を選んだ。
しかし1年も経たないうちに、社長が「経済的にキビシイのでこれからはワシ1人でやっていくことになったけんのう。悪く思わんじくりいのう(大分弁で、悪く思わないでね、という意味)」と社員皆クビになってしまった。
しかし、「ミャーコさんだけパートという形で残ってもらえんかのう。」と言われ、その結果、社長と私のたった2人で会社で働くことになった。
しかも日中はほとんど事務所に私ひとりだ。
また、社長の女房面をして何かと私と張り合ってくる鬱陶しい経理のおばさんが消え、人間関係のストレスというものがまったくない状態で働けるようになった。
しかもパートなので仕事がある時だけ出て行けばよく、家で思い切り作品制作できるようになったという幸運だ。
倒産の一歩手前の規模縮小という、大変な状況が、却って私にとって非常にラッキーな結果となった。
とはいえ経済的にはやはりきつくなるので、副業を始めざるをえなくなったが、またどこか食堂とかファーストフードとかでバイトするのか…と思うと、それはガラス窓を何枚も隔てたはるか遠い世界のことに思え、いくらお金がなくても、どうしてもそんなバイトをしようという気にはならないのだった。
でも、じゃあどうしよう、経済的な問題はどうするんだ、と頭では考えているが、やる気が起こらない物事というのは、とことんやる気が起こらないものだ。
どうしようかなぁ〜とぼんやり考えていた時、突然、奇跡のような光が稲妻となって、私の脳天に降りてきた。
そうだ、モデルの仕事を再開してみてはどうだろう?
モデルの仕事なら短時間で高収入が得られるし、嫌な仕事だったりマットコート社との都合が合わない場合などは断ることができたりと、いろいろ融通がきくし、何より私自身が楽しめる仕事だ。
何だか、信じられないような素晴らしい閃きだった。
ーーーー続くーーーー
(登場人物は実在の人物ですが、全て仮名にしてあります。)